032 都心のビルで貨物車の駐車実態を見て
2014年 3月
専修大学 准教授
岩尾 詠一郎

 先日、東京駅周辺で数日間にわたり複数のビルで貨物車用駐車場の利用実態の調査をしました。調査をしたビルのひとつでは、一日に100台程度の車両が駐車し、その車両の運転手が商品や物資の搬入や搬出のための作業をしていました。この調査をしていて特徴的だと思ったことがいくつかありましたのでここに紹介していきたいと思います。
 まず、あるビルでは、バンやワゴンタイプの車両に加え、見た目は普通の乗用車の形をした車両が駐車をしている姿を見かけました。一般的に貨物車というと荷台が箱形の形状をした車両を思い浮かべますが、そうで無い車両もかなり利用されていました。
 それらのバンやワゴンタイプの車両や乗用車から搬出される貨物の数量を見ると、段ボール1個や、封筒1通など少量でした。一方、2トン車などの大きな車両からは、多くの段ボールの搬入や搬出がおこなわれていました。ただ、貨物車の止まっている時間を見ていると、貨物の搬出や搬入の量に関わらずほぼ同じような時間駐車していました。その理由は何であるかを明らかにしようと、実際に、あるビルで搬入や搬出でエレベータが混雑している時間帯に貨物車の運転手を見ていると、エレベータの前で、数十分間待っている姿を見かけました。つまり、このような多層階建てのビルには、商品や物資を運搬するための専用や兼用のエレベータが十分な台数準備されていないことが多いため、エレベータが来るまでの待ち時間が長くなり、結果として、駐車時間の大部分を待ち時間がしめることになっていたのです。
 次にわかったこととして、このようなビルの貨物車用の駐車場は、地下に設置されていることが多く、今回調べたビルだけかも知れませんが、地下駐車場の出入り口の高さを見ると2.1mと設定されているものが見受けられました。この高さですと4トン車は、高さの制限から地下の駐車場に入っていくことができません。そのため、これらのビルに搬入や搬出をするための貨物車の大きさは、必然的に2トン車よりも小さい車両となっていたと言うことが分かりました。
 また、それらの車両を見ていると、先に示したようにバンやワゴンなどの2.1mの高さ制限でも進入可能な車両が多く見受けられました。ただこれらの車両では多くの貨物を一度に積載できないため、荷室の天井の高さが上下できるリンボー車を利用した納品や、車両の荷台の高さを低くすることで、2.1mの高さでも進入できるように工夫された車両での納品も多く見受けられました。
今回、数日間ビルの搬出入の活動を見ていて分かったこととして、貨物を運んでいる車両を、車両の形状から判断することが難しいと言うこと。そして、貨物車の駐車時間は、多層階建てのビルでは、エレベータを待つ時間が長いため、結果として長くなっていること。また、この貨物車の長時間の駐車は、貨物車が一日に納品できる納品先数を減らす要因となることから、多くの貨物を運ぶ車両がまちなかを走行する結果に繋がっていると考えられること。さらに、貨物を配送する運送事業者は、貨物を届け先に納品するために、車両を進入可能な車両への変更や、バンやワゴンなどの小さい車両を利用するなどの工夫をして届けられていることの3つのことが分かりました。
 以上のことから、都心の商業・業務施設に納品している貨物車は、貨物を届ける側が、進入路の高さや、縦の移動における待ち時間を考慮しながら、納品時間を守るために様々な工夫をしながら納品されているということを改めて理解していただきたいと思いました。
   また、特に、もし、みなさまが貨物と兼用のエレベータを利用する場合、貨物を運搬しようとしてエレベータ前で待っている人を見かけたら、そちらを優先していただけると、それが効率的な物流活動につながることにもなると言う事もご理解いただけると大変ありがたいと思いました。



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