033 女性の交通研究者の活躍を
2014年 5月
日本大学 教授
小早川 悟

 冒頭から自身の所属する大学の話題で恐縮であるが、日本大学理工学部交通システム工学科の2013年度の入学生全員が男子学生であった。学科定員の120名のうち例年1割程度の女子学生が入学してくるが、男子学生ばかりというのは、おそらく20年ぶりぐらいではないかと思われる(正確に調べたわけではないので定かではない)。いずれにしても本学科としては残念な結果であった。
2012年に発足した安倍内閣は、「三本の矢」と呼ばれる経済財政政策を打ち出し、「成長戦略」を閣議決定し、アベノミクスといった言葉とともにさまざまな対策を行っている。その一連の流れの中で、安倍内閣は、女性の活躍を成長戦略の中核に位置付け、経済界に対し女性の活躍推進に関した要請を行っている。つまり、少子高齢化が進み人口が減少していくわが国では、女性の活躍が国を支えていくうえで、欠かすことのできない重要なポイントとなってきているということの表れでもある。
 安倍内閣が発足する以前からも、リケジョ(理系で勉学あるいは研究を行う女性)やドボジョ(土木工学を専攻あるいは仕事とする女性)といった言葉が作り出され、女子学生への大学の理系進学のアピールや就職活動の推進に用いられてきた。私の所属する日本大学も、文部科学省科学技術振興調整費女性研究者支援モデル育成の機関として採択され、女性研究者のネットワーク形成と推進に取り組んでいる。このようななか、冒頭で述べたように交通システム工学科への女子学生の入学者がゼロであったことは、私自身としてはかなりショックな出来事であった。
 前置きが長くなってしまったが、「交通」という言葉は、「乗り物」を連想される場合が多く、女性には馴染みにくいキーワードなのであろうかと考えてしまうこともある。多くの子供たちのうち特に男の子は、鉄道や自動車に興味を持ち、それに乗ることや写真を撮ること、さらには作ることに興味を引かれていくが、女の子がこれらに興味を引かれることは少ない。一方で、「交通」は普段から誰もが移動する際に必要とするものであり、老若男女問わず日々接するものであることも事実である。欧米の視察に行ったりすると、役所の交通局の要職には女性が就いていることも少なくない。やはり、わが国においても交通政策分野で女性が活躍できるような支援が必要なのではないかと考えている。
 それでも、最近は交通に関連する委員会等で、経済学や経営学あるいはマーケットリサーチといったような分野における女性の研究者とご一緒することも多くなってきた。ただし、これらの女性研究者の方々がどこまで交通政策や交通計画等にご興味を持たれているのかは、今一つ分からないところがある。日本交通政策研究会では、事務局のなかには優秀な女性スタッフが活躍しているが、是非、研究者として交通政策をテーマとしていただけるような女性の方々を支援していくような取り組みがあってもよいのではないかと考えている。私のようなものが、このようなことを書くことも気が引けるが、日本交通政策研究会も女性会員を増やすことから始めてはいかがであろうか。  



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